長野県建築士会のご案内

長野県建築文化賞

  • 長野県建築文化賞
  • 長野県建築士会のご案内
  • HOME

長野県建築文化賞

長野県建築文化賞の目的

 長野県の建築文化の発展に寄与する優れた建築作品を広く募集し、意匠・技術面から総合的に審査し、その設計者である建築士の功績をたたえ表彰することによって、会員の創作意欲や設計活動の向上に資する。
 表彰作品及び設計者を公表し、社会に建築士の活動や建築士会の存在の理解をはかる。

令和2年 第15回 長野県建築文化賞 受賞作品

長野県内に建てられた建築物から、長野県の環境、風土、文化に根ざした作品、設計、造形表現及び施工における創意溢れる作品、景観や省エネに配慮した作品を募集し、優れた作品を表彰することによって、地域の建築文化の発展に寄与するとともに建築士の資質の向上に資することを目的に、隔年で実施している「長野県建築文化賞」の第15回受賞作品が決定しましたので報告します。

今回は、建築家、環境デザイナーで環境デザイン研究所会長の仙田満氏を審査員長に迎え、当会名誉会長の場々洋介氏、会長の荻原白氏の3名の審査員で審査が行われました。

作品の応募状況、審査過程は下記のとおりです。

応募いただいた皆様の表現の豊かさ、日頃の様々な創意工夫に審査員各位も目を見張っておられました。会員各位におかれても受賞作品をご覧いただき、日々の建築活動に生かしていただけたら幸いです。お忙しい中ご対応いただいた多くの関係者の皆様に感謝申し上げます。

○ 応募期間:令和2年7月~8月
○ 応募作品:一般部門11点、住宅部門16点、既存ストック活用部門8点 3部門合計35点
○ 審査会:第1次審査 令和2年9月25日(金)
     第2次審査 令和2年10月27日(火)、10月30日(金)及び11月20日(金)
○ 審査員:[審査員長]仙田 満氏(環境デザイン研究所会長)
     [審査員場々 洋介氏(当会名誉会長)及び荻原 白氏(当会会長)

一般部門
最優秀賞
(県知事賞)

星野リゾートBEB5軽井沢(北佐久郡軽井沢町星野)
佐々木 達郎

星野リゾートが若い年齢層を狙った新しいブランドのホテルである。軽井沢高原教会、ハルニレテラス等のある星野リゾートエリアの一画に位置している。延3,000㎡程度の規模で、木造2階建てで構成しているところが極めて挑戦的である。建物を2つに分棟し、その間に周辺の地形を取り込んだリラックスした谷状の内庭を巧みに形成している。内庭を囲むようにエントランスロビー、フロント、オープンキッチン等を配し、全体的にリゾート感にあふれながら隠れ家的な居心地の良さをつくり出している。外観は黒い板金でおおわれ、宿泊室は小さな窓、1階内庭周りをオープンというシンプルでわかりやすい空間構成としている。90cm角の木組をインテリア家具として客室、ラウンジに多用しているアイディアがおもしろい。ホテルというビルディングタイプより、床壁の遮音性、耐震性が求められるが、慎重な設計によってそれをしっかりとクリアしている。リーズナブルな建設コストで実現し、若い設計者の力量の高さを証明している。最優秀賞にふさわしい作品である。(仙田 満)
優秀賞
やぶはら小児科医院(上伊那郡箕輪町三日町)
荒井 洋

南北を走る国道153号線伊那バイパス沿いの巨大な建築物に囲まれ、東西に開いたキラリと光り輝く植栽ともマッチした端正な建築です。景観に配慮された片流れ屋根の組み合わせで建物全体を低く抑える反面、受付待合室は登り梁工法の豊かな内部空間を創りだしている。内装は自然素材で纏められ各部屋のボリューム感も的確で医院建築ではあるが、アットホームな木の香り漂う建物でした。(荻原 白)
優秀賞
ヤマショー安曇野ショールーム(安曇野市穂高柏原)
丸山 和男

北アルプスを背景に建つ片流れのシンプルな建築は景観に実にマッチすると思う。
建物も低層に抑えられ、大型農道からだいぶ後退しているため圧迫感もない。
以前はガソリンスタンドがありましたが、それに引き換え看板なども控えめで好感を感じる。大変環境がよくなった。建物はストーブを主に展示するショールームなので、屋根に3つのパターンの煙穴が付いているのもわかる。グレーと白色の外観で安曇野の唐松が使われていて地域材活用にもなっている。内部は機器が置かれた暮らしをイメージしてもらえる広さで、スキップ部分を打ち合わせ室に利用、また下部はキッズコーナーとなっている。小さな空間ながら変化が楽しめる質の高い建物だと思います。(場々洋介)
奨励賞
上田中之条ツインウッドプロジェクト(上田市中之条)
関 邦則

上田市にある木造の寝具店と住宅である。店舗は前面道路とそれに沿った敷地にある勾配をうまく利用した空間配置としている。何よりもシンプルな木構造の梁が美しく、屋根の構成も巧みである。エントランスレベルよりも奥の展示スペースは少し上がり、さらに屋根裏的な構成で2層分のサービス展示スペースが開放的で、リズム感よく組み合わされている。この空間構成は木の美しさと共にとても評価できる。その脇に建つ住宅棟は平屋の2世帯住宅である。中庭により2世帯が程よい距離感で隣接されている。木、土壁、屋根の構成も巧みである。非常にバランスが良く、周囲の景観にふさわしい木造建築として奨励賞を越える質をもつ作品に仕上がっている。奨励賞というと若手という感があるが、ベテランの設計者がまさに安心感がありながら、挑戦的で若々しい作品をつくられていることに共感を覚える。設計者のますますの活躍を祈りたい。(仙田 満)
住宅部門
最優秀賞
(県知事賞)

風立つ丘の家 ~都会的里山暮らし~(小諸市滋野甲)
鎌田 賢太郎

小諸市の雄大な景観を望む緑の斜面に建つ住宅である。東京に新幹線通勤し、田舎暮らしと両立させる形でつくられたが、コロナ禍でリモートワークが主となった今、新しい時代の都市生活者の1つの型を提示する住居となっている。スキップフロアをうまく用いながら、全体的な生活動線を回遊型にまとめ、景観の変化を楽しめる。丘に吹き上げる谷からの強い風に対抗した形での壁勝ちの立面を道路側に、開放的なガラス張りの立面を緑の谷側に設け、プライバシーを守る住宅としている。大きな犬2匹と猫2匹と共に快適な田舎暮らしの住宅としてファッショナブルな住居のモデルとなろう。特に床全面をタイル張りとし、ペットと共生する住宅清掃観は新鮮であった。地形と敷地のポテンシャルを最大限に活かした設計力が評価される。自然の変化を楽しみながら、都市と田園を行き来する、アフターコロナのライフスタイルを先取りした住宅である。住宅部門の最優秀作品としてふさわしい。(仙田 満)
優秀賞
林家(りんか)(塩尻市北小野)
吉田 満、吉田 京子

里山に近い場所に建つこの住宅は、実家の山からの木材をふんだんに利用して建てられている。音楽好きなご夫婦の為なのか、ほぼ平屋の形態の住宅ですが、2階部分は音楽会などを楽しめるコンサートホールのギャラリーのように使えるし、吹抜けの大きな空間も気持ちいい。変形宝形の屋根形態が内部でも感じられる。中央の大黒柱は桧丸太で傘の下に広がる空間がある。外部の庇の先端の破風が薄く、高いデザイン性を感じる。キッチンの高窓は隣家の緑を借景にしている。また居間の唐松の家具も実家からの木材を利用され素晴らしい。外構もシンプルで基礎工事の残土を利用して築山も傾斜地にたつ外構に変化を添えている。(場々洋介)
優秀賞
坂道の家(飯田市上郷黒田)
小川原 𠮷宏

現地で、こんな難しい敷地の高低差を絶妙に解決し外部内部空間を創り出した建築を観て感動しました。南前面道路からフラットに玄関ホールとガレージにアクセスでき、玄関ホールを起点にLDKはスキップで北に1m下がり、眼下に広がる街の風景を享受でき、2階寝室はシースルー階段で2.9m上がり南面に配置される。内部空間の高低差の変化で四季折々の風景を満喫できる素敵な住宅を体感できました。(荻原 白)
奨励賞
新人賞

神田の家(松本市神田)
加藤 毅

県外から松本市に移住されたご家族の住まいは、自然素材を沢山取り込み通風と暖気の還流に配慮された片流れの家です。敷地は分譲3区画の奥にあり難しい旗竿地を見事に解決した建物配置となっており、内部も温もりのある自然素材で纏められ信州での生活を満喫できる生活空間と評価しました。現在の外構が今後は徐々に植栽等で整備されることを期待します。(荻原 白)
奨励賞
いなか暮らしの家(須坂市村山)
下﨑 明久

東京から畑を備えた広い土地へ移住された方の住宅です。広い敷地に緑あふれる環境が見事でした。また、一般の住宅にない作業土間があり、漬物、餅つきができ、薪のかまどスペースがあります。内部は信州産の木材をふんだんに使い、まさに信州の木の家といえる。アルミサッシを使わず、すべて木製建具で雨戸、網戸、内障子ができていて素晴らしい。広いリビングにあり庭に面した建具は全開できて四季を楽しめる家だと思う。年配のご夫婦のため落ち着いた住宅であり、野菜づくりなどを通していなか暮らしが楽しめる家だと思う。薪置場と同じデザインで、塀も木材にこだわり温かみを感じる。2階部分には露天風呂も計画され北信五岳や北アルプスをみながら楽しむことができる。(場々洋介)
既存ストック活用部門
最優秀賞
(県知事賞)

旧脇本陣「粂屋」(小諸市市町)
甘利 享一

小諸市の北国街道筋に建つ脇本陣の改修建物である。設計者をはじめとする地元建築士たちの保存要望を受けて市が買い取り、観光拠点及び宿泊施設として整備したものである。脇本陣として機能した江戸時代の原型復元というより、明治、大正、昭和、平成、令和とつないできた雰囲気を受け継ぎながら、現代の旅館として改修を行ったところが意義深い。奥座敷からは隣接する寺院越しに浅間山が見える。改修のポイントは中庭の形成であるという。地元の造園家との共同設計によるさわやかな外部空間ができ、茶室の待合風の佇まいも隣地との間につくり出している。この中庭が機能的にも、景観的にもパブリックゾーンとプライベートゾーンを有効に分けている。今後、伝統的な町並がさらに保全され、小諸の観光資源として広く活用されることが望まれる。将来的な町づくりを視野に入れた改修として極めて高く評価され、最優秀賞にふさわしい。(仙田 満)
優秀賞
窓月 まつしまや(下高井郡木島平村往郷)
牧野嶋 彩子

築130年の民家と2つの蔵(文庫蔵、漬物蔵)を見事に宿に再生し、周辺景観も修景した実例は今後村内のモデルとなると確信しました。古民家の保存・再生・継承に優れた設計者の技は随所に視られ、解体したら二度とその価値が後世に戻らない。往時の造り酒屋時の煉瓦煙突と近接の元漬物蔵・雪に増築された浴室棟は何の違和感も無く景観を形成していました。(荻原 白)
優秀賞
新人賞

Satoyama villa 本陣 (旧本陣 小澤家)(松本市保福寺町)
太田 匡樹

長い間空き家となっていた小澤家住宅を地元の企業が購入して、民宿として改修された建築です。小澤家は松本藩主が参勤交代で休憩した場所、この住宅は築100年以上、改築前3階建で中央には吹抜けがあり、文化財に匹敵するもので既存の持つ迫力はものすごい。民泊という条件で、建築確認等は免除されているようだ。4グループの宿泊が可能で、各ゾーンに浴室・トイレが中で追加されている。座敷横の広縁を浴室に改築しているため、書院窓を開けると浴室という大胆なプラン。既存の持つ迫力が素晴らしく、新たな水廻りが刺激ですが、設計者がどこまで既存を変えるかが 人により評価は分かれるかもしれない。今問題となっている空き家・民家の再利用について、良いきっかけとなる施設だと思う。(場々洋介)

長野県建築文化賞に戻る